リアリティのない歌は歌わない、
それが流儀
まず、ラッパーを志したきっかけを教えてください。
中学2年で尾崎豊さんの音楽を聴いたときに、自分も音楽でメッセージを人に届けたいと思ったのが最初です。そして、人並みに道を外していた17歳当時、名古屋の大須でアルバイトをしていた洋服店でかかっていたのが、ヒップホップでした。荒んだ生活のなかから放たれた音楽が人々に賞賛されていることに、少年時代の僕に衝撃を与えたんです。“自分の表現はこれだ!”って稲妻が走った瞬間がありました。
長くヒップホップの表現を極めているミュージシャン人生のなかで、AK-69ならではの流儀はあるのでしょうか?
ヒップホップという音楽は、基本的にファンタジーがない。そのラッパーの人生のリアルしかないんです。リアリティしかない音楽。自分の人生からメッセージを紡ぎ出すということは、人生そのものということ。どれもが自分の経験から生まれています。だから、リアリティのない歌は歌わないこと。これは絶対です。
リアルな言葉を紡ぎ出すために、探究していることはありますか?
ヒップホップは研究してやるものでもないと思っています(笑)。結果的に、自分が好きな音楽、作りたい音楽をやっています。人間って好きなものに対しては何だって熱くなれるんです。好きなことを続けていたら、知らぬ間にそれが探究になっていて、自然とアップデートされていく。ものづくりにおける職人も同じだと思います。その道を愛しているからこそ、トライアンドエラーを繰り返して、至高の逸品を作り上げられるのでしょう。自分自身が、そうした職人と同様かはわかりませんけれど(笑)。
ひとつ言えるのは、音楽をつくること自体が好きだし、メッセージを放つことも好き。自分の使命だと思っています。常にそのときの最善を尽くしています。
最善を尽くすことがリアルな言葉を生み出す源にもなっているんですね。
ただ、歌唱については鍛錬が必要なんです。技術なので。ライブでいい歌唱をするためには日々鍛錬しています。鍛えれば鍛えるほど技術は向上するんです。それこそ気絶寸前になるほどのアスリートトレーニングをしていますし、怪我予防やアフターケア、体の柔軟性を強化するためにはピラティスも取り入れています。もちろん、体のフレームをつくるためには筋トレが不可欠で、心肺機能を鍛えるためにはランニングもします。
今この年齢で最前線を走るためには、食事にも気を遣っています。すべてはライブパフォーマンスのため。そのためには、知識やメソッドなどのアップデートも絶えずおこなっています。