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挑む男の肖像 PORTRAIT OF A MAN DARES TO CHALLENGE

挑む男の肖像 PORTRAIT OF A MAN DARES TO CHALLENGE

AK-69(エーケーシックスティナイン)

人々を鼓舞し続ける熱い魂のラップが、多くのオーディエンスを惹きつける。日本のヒップホップ界をリードし続ける男、AK-69。40代を迎えてなお最前線を闊歩するその姿からは、チャレンジし続ける「フォーエバー・ヤング」なスピリットがほとばしる。

そんな彼の姿勢や信条に共鳴するのが、革新的かつ挑戦的なものづくりで常に時計業界を牽引するスイスのウォッチブランド、クストスだ。止まらないチャレンジの源泉や、時間に対する姿勢など、AK-69の真髄に迫った。

リアリティのない歌は歌わない、
それが流儀

まず、ラッパーを志したきっかけを教えてください。

中学2年で尾崎豊さんの音楽を聴いたときに、自分も音楽でメッセージを人に届けたいと思ったのが最初です。そして、人並みに道を外していた17歳当時、名古屋の大須でアルバイトをしていた洋服店でかかっていたのが、ヒップホップでした。荒んだ生活のなかから放たれた音楽が人々に賞賛されていることに、少年時代の僕に衝撃を与えたんです。“自分の表現はこれだ!”って稲妻が走った瞬間がありました。

長くヒップホップの表現を極めているミュージシャン人生のなかで、AK-69ならではの流儀はあるのでしょうか?

ヒップホップという音楽は、基本的にファンタジーがない。そのラッパーの人生のリアルしかないんです。リアリティしかない音楽。自分の人生からメッセージを紡ぎ出すということは、人生そのものということ。どれもが自分の経験から生まれています。だから、リアリティのない歌は歌わないこと。これは絶対です。

リアルな言葉を紡ぎ出すために、探究していることはありますか?

ヒップホップは研究してやるものでもないと思っています(笑)。結果的に、自分が好きな音楽、作りたい音楽をやっています。人間って好きなものに対しては何だって熱くなれるんです。好きなことを続けていたら、知らぬ間にそれが探究になっていて、自然とアップデートされていく。ものづくりにおける職人も同じだと思います。その道を愛しているからこそ、トライアンドエラーを繰り返して、至高の逸品を作り上げられるのでしょう。自分自身が、そうした職人と同様かはわかりませんけれど(笑)。

ひとつ言えるのは、音楽をつくること自体が好きだし、メッセージを放つことも好き。自分の使命だと思っています。常にそのときの最善を尽くしています。

最善を尽くすことがリアルな言葉を生み出す源にもなっているんですね。

ただ、歌唱については鍛錬が必要なんです。技術なので。ライブでいい歌唱をするためには日々鍛錬しています。鍛えれば鍛えるほど技術は向上するんです。それこそ気絶寸前になるほどのアスリートトレーニングをしていますし、怪我予防やアフターケア、体の柔軟性を強化するためにはピラティスも取り入れています。もちろん、体のフレームをつくるためには筋トレが不可欠で、心肺機能を鍛えるためにはランニングもします。

今この年齢で最前線を走るためには、食事にも気を遣っています。すべてはライブパフォーマンスのため。そのためには、知識やメソッドなどのアップデートも絶えずおこなっています。

自分のチャレンジに
終わりはありません

アスリートからの支持も厚いAK-69さんですが、人を鼓舞する一方で、自身もまたチャレンジし続けているように見受けます。

日々、チャレンジですから(笑)。ヒップホップの頂点に君臨していると言われることもたまにありますが、自分では全然そのつもりはありません。なりたい気持ちはありますが(笑)。

目指した山が、いざ登ってみると実はそれほどでもなかったということも少なくない。しかも、向こうを見れば、もっと高い魅力的な山があるので、“じゃあ、次はあれに登ろう”と、クルーたちとさらに高い山を目指していく。もちろん、さらに高い山ですから、そのために足りないものを補いながら、いろいろな努力をして登っていくんです。

達成感は、登り終えたその瞬間だけ。だから、登っては向こうの山、そしてまた向こうの山、といった感じで終わりがないんです。この数十年、ずっとそんなことを繰り返しています(笑)。

チャレンジには終わりがないんですね。辛くはないですか?

辛いですよ。本当に苦しいし、夜眠れないことだってあります。ただ、結果的に人生の大切なものを味わえている気がします。ストレスといえばストレスですけどね。

チャレンジするということには、そりゃ、痛みをともないますよ。心地よく事を成し遂げられるなら、みんな楽々成功できちゃいますから。チャレンジって苦しいんです。でも、それは愛しているからできるんじゃないですか?

辛いこと、苦しいこと、というのは具体的にどのようなことですか?

たくさんありますよ。経済的なこともそう。大きな挑戦にはお金がつきもの。億単位の金が動くことだってあります。失敗のリスクは計り知れません。

また、エンターテインメントが仕事である以上、ブランディングがうまくいかなかったり、イメージが崩れたりしたら、そうした信頼を回復するには、積み上げてきたことの倍以上の労力を要します。

だから、自分の一挙手一投足、あらゆることに気を遣って。それが成功しようがしまいが、未来の自分が見たときに、それが格好いいかどうかを重視しています。

1日48時間でもいいくらい。
時間は全然足りません!

クストスでは、今年「フォーエバー・ヤング」というテーマを掲げています。同タイトルの楽曲もありますし、AK-69の精力的な活動からもそれは伝わってきます。「フォーエバー・ヤング」であるためにしていることなどはありますか?

実は、自分ではその点を深く考えてはいません(笑)。若い世代のラッパーとの間に年齢差は事実としてありますから、多少俯瞰する部分がないわけではないですが。“今の若い子の音楽”と“僕が考えている音楽”との間に、はっきりと壁を感じるようになったときは、引退してもいいんじゃないかと思います。気持ちだけは若いんです(笑)。

例えば、飲みの席で言うと、同世代の人としゃべっているときと、若い子たちとしゃべっているときを比べると、“バイブスが合わないな”と感じるのは、前者のほうが多い(笑)。

この感覚は大事にしていて、これが背伸びしないといけないと感じたら、それは身の引き時でしょうね。

年上だからと気遣い始めたらおしまいだと(笑)。

はい。若い子からしたら自分が父親くらいの年齢の場合もあるので、同等とは見られていないとは思いますが(笑)。そりゃそうですよね。自分が20代のときは、20歳年上のラッパーはいませんでした。せいぜいジブさん(zeebraさん)が9歳くらい上で。それでも、彼をフォーエバー・ヤングな人だと感じていましたから、自分もそうありたいなと。

肉体に衰えは感じますか? それともやはり「フォーエバー・ヤング」?

今のところ衰えは感じないですね。50代、60代になったら変わるのかな? でも、長渕剛さんは、御歳67であの肉体美。CMにも出るほどですから。モンスター級のフォーエバー・ヤングなおじさんが先輩にいるので、食事や運動を駆使すれば、できないことはないと思います。

良いものは1日で成らず、
思いを重ねて生まれるもの

このたび、クストスの最新モデル「チャレンジ シーライナーP-S オートマティック サファイア」を着用していただきました。クストスのチャレンジマインドを表現した腕時計ですが、インプレッションを教えてください。

最高です! 興奮しかない(笑)。

第一印象としては、ラグジュアリーでありながら、スポーティな部分も意識してつくられているなと。だから、フォーマルにもカジュアルにも振れる点が魅力だと思います。

今日は、自分のパーティ(去る6月9日に開催されたAK-69さん主催のパーティ会場にて取材)で着用していますが、こうした華やかな舞台にも似合います。一方でジーパンと無地のTシャツにクストス一本着けて、クルマで乗り付けてもいいですし。

日本では、ラグジュアリーに定義されるヒップホップパーティ自体がこれ以外に存在しないので、単にカジュアルだけでなく、フォーマルにも着けられる点は大きいです。

このようなパーティをプロデュースする側の人間として、フォーマルスタイルをキメられないようなラッパーじゃダメ。40歳を超えて、その辺のキッズと変わらない格好しかできないというのは、自分の中では格好いいとはいえません。

最たる例は、Jay-Zでしょう。財界にも顔が効くし、そうしたパーティにもビシッとキメて、ばっちりハマる。

クストスの時計に魅力を感じるのは、ラグジュアリーとカジュアルの両方にハマる点で、自分のライフスタイルとも共感する部分が多いなと、僭越ながら思います。

今後もおすすめいただけそうですか?

はい。リアルを伝えるのが自分の役目なので、自分がいいと思ったものしか推奨しません!

今後、日常でこの時計を着けて感じたことを、自分のライフスタイルと交えながら、SNSなどでも発信していけたらと思います。

腕時計自体もお好きだと聞きました。その魅力は?

ロマンですよね。こんな小さい、しかも、身に着ける人しか楽しめないものが、なぜ、こんなにも高額なのか。何百万、モノによっては何千万、億超えのモノまであります。

でも、時計技師が作り出す複雑なムーブメントや、手間のかかった外装など、その世界観が凝縮されたもの。そこに価値があって魅力となっているんだと思います。

一方で、安いものはインスタントなんです。すぐに作れてしまう。

エンターテインメントも然り、時計も然りで、良いものは1日では成らず。それだけ思いを積み重ねて生まれるもの。そうした最たるアイテムなんじゃないですかね、時計って。

自分の決めた道のために
一分一秒を使っていきたい

時間について。AK-69さんにとってはどのようなものですか?

何時間あっても足りないもの。でも、ゆっくりもしたいです(笑)。ずっと戦い続けている人生なので。いや、もっと戦い続けている先輩がいるので、自分みたいな若造が言うのはおこがましいですけど。少なくとも1日48時間は欲しいです(笑)。

オン・オフのスイッチがあれば、教えてください。

日常から離れること。ハワイに行くと日常との関係性が遮断できて、完全にオフになります。海外といっても、LAやNYでは、仲間とアーティストに会えば、すぐにスタジオに入ろう、とか、セッションしよう、と半分仕事になってしまいますから(笑)。

ハワイだと、筋トレや有酸素運動などのルーティーンはしますが、そのあとはフリータイム。“今日何しよっか?”というノープランが、自分のなかでの一番の贅沢で夢の生活なんです。めちゃくちゃ余裕がありますからね。

では、AK-69さんにとっての一番幸せな時間とは?

こう言っておきながらなんですが、やっぱりステージに立っている時間です(笑)。特に自分たちの勝負のステージに立ったときの緊張感と興奮は何者にも代えがたい。

家族や愛する人たちと過ごす時間も大事ですが、やはり、ラッパーである自分にはステージに立って、みんなのエネルギーを一手に受けたときのあの興奮というのが、一番幸せな瞬間ですね。

止まることがなさそうなAK-69さんですが、最後に今後の未来図は?

今後のことは、自分のブループリントがあってすべて決めています。自分のゴールまでのアーティスト人生のシナリオどおりに粛々とやりきりたいです。

“運に任せて”という言葉は、自分の辞書にはありません。ちょっと人気が下がったから、フェードアウトしよう、なんていうキャリアの閉じ方は決してないでしょう。

最後までラッパーとしてのキャリアをまっとうし、自分が決めたとおりに、人生の一分一秒を使っていきたいと思っています。

愛知県出身。17歳からヒップホップの道へ。名古屋のシーンで頭角を表したのち、活動の幅を広げ、2012年にはNYへ渡り、武者修行の旅へ。2014年には日本武道館で単独ライブを実施。2016年には、名門レーベル「Def Jam Recordings」と契約。今や、日本を代表するヒップホップアーティストに。アスリートたちからも支持されており、登場曲やテーマ曲に採用する選手も多数。マネジメント会社Flying B Entertainmentの代表も務める。