年に一度、日本を離れてレースを行うのが恒例となっているスーパーGTシリーズ。その開催国がマレーシアからタイに移されて、今年で3回目。富士をも上回る高速サーキット、タイ・ブリーラム州にあるチャーンインターナショナルサーキットが、その舞台である。
土曜日の晩、サーキット周辺を強烈なスコールが襲い、早朝の路面はウェットコンディション。これは天候に苦しめられるかと思われたものの、強い日差しが路面を急速に乾かし、公式練習が行われる頃にはほぼドライコンディションに戻されていた。その公式練習を、LEON CVSTOS AMG-GTは6番手のタイムを計測。順調な滑り出しを見せた。だが、続いて行われる公式予選を前にして、サーキット上空には黒い雲が。幸い、パラリと小雨がちらつく程度で済んだが、本格的に降り出してきたなら、きっと展開はまったく違ったものとなっていたことだろう。その一方で、日差しが遮られたことで、Q1が始まる頃の路面温度は一気に下がってしまった。
そんなQ1に挑んだのは蒲生選手。しっかりウォームアップを行った後、早々にアタックをかけて8番手につけ、難なくQ2進出に成功する。続いて走行した黒澤選手もアタックのタイミングは早め。その結果、5番手につけたが、その後にタイムを伸ばしてくるライバルも多く、終わってみれば10番手に甘んじていた。「自分たちがやるべきことは、しっかりやれているけど、やっぱり厳しい。JAF-GTは車重もものすごく軽くて、ハンデを積んでも我々より軽い。でも、それを言っても仕方ないので……。とにかくベストを尽くして、少しでも多くのポイントを獲得したいと思います。まだまだチャンピオンシップは、諦めていませんから」と黒澤選手。決勝レースでの巻き返しを誓ってくれた。
ある意味、日本よりも熱狂的なレースファンが集うことで知られるチャーンインターナショナルサーキット。太鼓やホイッスル、そして熱い声援がドライバーに送られスタート時刻が近づくにつれ、それらはさらにヒートアップしていく。そのことが天候をも刺激したのか、決勝レース前後にはこの週末一番の暑さに。それまでは30度を超すか越さないか程度の気温が33度まで上がり、路面温度に至っては44度にも達していた。今回のLEON CVSTOS AMG-GTのスタート担当は黒澤選手。気温や路面温度同様、いきなりアツい先陣争いからレースは開始された。
このコースはグランドスタンド前のストレートからターン1、ヘアピンがストレートでつながれるため、よりストレートパフォーマンスに優れるFIA-GT3の猛攻を食らい、黒澤選手はふたつポジションを落としてしまう。そればかりか、3周目には後続車両から接触をも受けることに。その際にマシンにはダメージがほとんどなかったのは、まさに不幸中の幸い。いきなり13位からのレースとなってしまったが、その後はペースを落とすことなく、黒澤選手は周回を重ねていく。
そして、25周目には蒲生選手とバトンタッチ。いったんは順位を落としたLEON CVSTOS AMG-GTだったが、黒澤選手が先頭とタイム差をあまり広げられることなくペースを作ったことと、素早いピットワークにより、ドライバー交代を済ませると10番手に返り咲くこととなる。その後、メルセデス同士の激しいバトルを繰り広げた末に、ついに蒲生選手は終盤、9番手に上がり、先行車両のリタイアもあって、直後には8番手に躍り出ることとなった。
しかし、好事魔多し。あと2周、7位のポジションをもとらえたかに思えた蒲生選手が突然のペースダウン。ピットに滑り込んでくるではないか。原因はガス欠乏症だった。急きょガソリンを補給して、コースに戻されたLEON CVSTOS AMG-GT。その間に11番手まで後退し、挽回を許されぬまま、無情にもチェッカードフラッグが振り下ろされることとなった。
悔しい結末となってしまったものの、ラスト2戦はオートポリスでの第3戦代替レースを含めた土日の2レース開催。大どんでん返しも期待できる、その大会にLEON CVSTOS AM-GTはトップから30ポイント差で臨むこととなった。この差は大きくもあり、小さくもあり……。いずれにせよ、年間王座獲得の可能性を残す限りは全力を尽くそう、そうドライバーもスタッフも誓い合って、灼熱のサーキットを離れることとなった。