2016年Super GTシリーズ開幕の地は、岡山県北部の山あいに位置する岡山国際サーキット。コンパクトなサーキットながら1周3703m。1994年、95年にはF1グランプリも開催された本格的なコース。短い直線をヘアピンカーブで繋ぐようなテクニカルなコースレイアウトは、マシンのセットアップの難しさを教えてくれているようだ。K2 R&D LEON RACINGはこの開幕戦にニューマシンMercedes-Benz AMG GT3/M159を投入。ドライバーは昨年に引き続き黒澤治樹選手と蒲生尚弥選手。昨年第4戦の富士スピードウェイで2位表彰台に立ったコンビで今シリーズも臨むことになった。
ニューマシンAMG GT3は昨年のSLS GT3に比べダウンフォースが増え、コーナリングスピードが向上。だがダウンフォース増加のぶん、若干ストレートスピードは低下する。というのが事前評価だった。しかし黒澤選手は「確かにダウンフォースは増えているが、ストレートスピードが遅いとは思わない。昨年と変わらない感じ」と言う。ならば、長いストレートが1か所しかない岡山でのマイナス要素は、ない。それを証明するかのように3週間前にココ、岡山国際サーキットで行われた公式テストでLEON CVSTOS AMG-GTは27台が参加したGT300クラスで8位に入るタイムを記録しており、大きな期待とともに公式予選に臨むことになった。
公式予選前に行われた練習走行でLEON CVSTOS AMG GT3は期待どおり、いやそれを上回る走りを見せGT300クラスのトップを飾る。しかも昨年の予選で記録されたコースレコード(1分26秒532)を破る1分26秒330をマーク。こうなるとニューマシンデビュー戦でのPPの期待がかかる。だが予選Q1で予想外の事態が……。黒澤選手が「周囲はまだ本当の力を出していない。予選が始まれば各チームもっと速くなるはず。まったく気を抜けない」と語っていたとおり、ライバルたちが牙を剥いてきた。チームはQ2に進出できる上位14台には入ったものの8位。トップからはコンマ473秒差を付けられてしまった。
一夜明けた決勝レース。岡山国際サーキット周辺はまだ暗いうちから観客のクルマの列ができ、スタンドはファンでぎっしりと埋め尽くされ、その数は実に約2万人。気温20度、路面温度26度。曇り空ながら春の暖かさを感じさせるなか、82周の決勝レースを迎えた。決勝前のフリー走行、ガソリンタンクを満たした状態で、決勝のパフォーマンスを確かめる時間であるこのセッションで黒澤選手がトップタイムを記録。「マシンはいい感触だった」と黒澤。前日からのいい状態を維持したままLEON-CVSTOS AMG-GTはファーストドライバーの黒澤選手が乗り込んでスタート。逃げるVivac 86 MCの土屋武だが、LEON号は1秒から2秒の差をキープし、隙を伺う状況が続いた。それも20周を過ぎるあたりからその差は詰まりはじめ、30周を過ぎるころにはテール・トゥ・ノーズの状態に。いつでも抜けるように見えたがベテラン土屋選手のうまいブロックもあって抜けない。ここでチームは早目のピットインを決断。31周目でピットにマシンを向けた。
ここでチームは左側2本のみのタイヤ交換を決断。タイヤのパフォーマンスを確認してあらかじめ決めていた作戦だった。ピットインのロスタイムを最小限に抑えて交替した蒲生尚弥選手をコースに送り出した結果、LEON-CVSTOS AMG-GTは見事、トップに浮上していた。そして「タイヤをいたわりながらもいいペースで最後まで走ることができた」と、後続を次第に引き離し、最後は2位に13秒近い大差をつける快走で、チーム結成3年目でうれしい初優勝を飾った。
この優勝はニューマシン、Mercedes-Benz AMG GT3/M159のデビューウィンでもあり、黒澤選手にとっては4日に誕生した 三女への最初のプレゼント、そして地元、岡山県倉敷市出身の蒲生選手にとっては地元応援団の前での初優勝。数多くの「初」を達成した優勝でもあった。レース後、遠藤会長以下、ドライバー、ピットスタッフ皆が涙、涙の男泣きだったのが印象的だった。