前日の土曜日に行われた第3戦の熱戦から一夜明けた11月13日、最終のシリーズ第8戦を迎えた。思い起こせば4月に岡山国際サーキットで行われた開幕戦、チーム設立3年目にして初優勝を飾ったLEON CVSTOS AMG GT3。黒澤治樹選手、蒲生尚弥選手も速さ、そして確実さを見せ、この勢いのまま初のシリーズチャンピオンを狙う勢いだったが、その後にBOP(バランス・オブ・パワー=性能調整)による車両重量の増加など、マイナス要素が重くのしかかり、結果を出せない戦いが続いた。2戦が一気に開催されるグランドファイナルに臨んでも大きな変化はなく、前日に行われた第3戦は予選12位、決勝は今シーズン3回目のポイントゲットとなる9位に食い込んだものの、わずかながら残っていたタイトルの可能性も消えてしまった。もちろんこれはチーム本来の実力どおりなポジションではない。最後の戦いはチームの気迫を見せてやろう。全員がその思いを共有して再びツインリンクもてぎに立った。
この1年のチームの成長を、そして真の強さを見せよう。その思いはもちろんドライバーも持っていた。前日と同じ15分間の一発勝負となる予選、今回は蒲生尚弥選手が乗り込んでコースイン。この週末、ドライコンディションでの初めてのタイムアタックとなり、不安を残したままの走行だったが、蒲生選手、そしてチームの気迫が驚異のタイムアタックを実現させた。蒲生選手がレコードタイムでトップに立ったのだ。残念ながら予選残り時間1分を切って31号車プリウスGTにかわされ2番手となってしまったが、その差はわずか0秒07。「マシンは何の問題もなかった。タイヤも昨日と同じ」と蒲生選手。前日追い上げを見せたタイヤだ。加えて最終戦はウェイトハンデ撤廃の規定。つまり完全に同じとは言えないものの初優勝を飾った開幕戦と同じだ。しかもあの時も予選2番手からのもの。岡山戦の再来を――そう、優勝で2016年シーズンを締めくくる。期待は一気に高まった。
第8戦決勝は前日の第3戦と同じ黒澤治樹選手が乗り込んでスタート。序盤はポール・ポジションからスタートの31号車プリウスにぴたりと付けて周回を重ねる展開で、2位をキープしたまま早目の15周目でピットイン。ここでチームは負担の大きいフロントタイヤのみ2本交換の作戦を実施。ピットタイムを少なくし、交代で蒲生尚弥選手がコースに復帰。逆転のトップを狙ったのだが、2周後にピットインしたトップのプリウスが予想外のタイヤ無交換。後半に入ってほとんどのマシンが予定のピットインを済ませた時、LEON CVSTOS AMG GT3は同じくタイヤ無交換作戦をとった25号車MC86にも交わされ3位。それでも周回が進めば、タイヤ無交換の前2台はラップタイムが落ちてくるはず――。それはつまり、蒲生選手の追撃開始ののろしが上がる時とばかりに、その時のためにジワリジワリと差を詰めていく。しかし2位との差をコンマ3秒まで詰めた38周目、LEON CVSTOS AMG GT3が突然のピットイン。「急に3速でスタックしてしまった」と蒲生選手。ギアトラブルだった。なす術はなくここでレースを終えることになってしまった。無念の結果となったが、最後にチームの、ドライバーの底力を見せることはできた。これは必ず来年につながる。チームスタッフ、そして黒澤治樹選手、蒲生尚弥選手はツインリンクもてぎを後にした。