2016 Super GTシリーズは夏の三連戦の最終戦、鈴鹿1000㎞を迎えることとなった。ここが天王山とも言われるのは、特別な1戦でもあるからだ。 それは通常300㎞、長くても500㎞のレース距離で争われSuper GTレースが1周5・807kmのテクニカルコースを173周、一気に1000㎞もの距離を走り通さなければならないから。 もっとも173周はGT500マシンの周回数で、GT300クラスはそれよりも少なくなるが、マシンにとってもドライバーにとっても過酷な戦いであることに変わりはない。開幕戦の優勝以来3レースノーポイントが続き、シリーズランキング7位で鈴鹿に乗り込んだLEON CVSTOS AMG‐GT。年間タイトルに向けて2勝目を狙いたいところだ。ランクトップとは17ポイント差で、勝てば一気の逆転も可能。チーム全員が「鈴鹿1000㎞レースは、ライバルもウェイトハンデが重くなるので十分に戦えると思う」と前戦で語った、蒲生尚弥選と同じ思いで公式予選に臨んだ。
公式予選前に行われたフリー走行で蒲生尚弥選手が有言実行。2番手タイムを記録すると、その勢いのままQ1に出走し、ここでも2番手タイムをたたき出した。今季初のポールポジションも期待されたQ2だったが、黒澤治樹選手の力走及ばず9番手。GT300クラスの後にGT500のQ1走行があるために、路面にタイヤのラバーが付着してグリップが違ってくる。これを見越してセッティング微調整してQ2に臨むのだが、この調整が行き過ぎたと言う。「クルマのバランスが狂ってしまった」と悔やむ黒澤選手だが、マシンそのものの好調さはQ1で証明済できた。そんな大きな期待とともに翌日曜日の決勝に臨むことになった。
朝から降っていた雨も止み、決勝のスタートを迎える頃は路面も乾き始める状況。そんな不純な天候にもかかわらず、夏休み最後の週末とあってか3万4千人もの観衆が見守るなか、LEON CVSTOS AMG‐GTは黒澤治樹選手がステアリングを握ってスタート。8位にポジションを上げて28周目にピットイン。蒲生尚弥選手にバトンを繋ぐも、戦況は一進一退。一時的に強い雨が降り、それがすぐに止む――。その影響で一周のコース内でもコンディションが大きく違うといった難しく、厳しい戦いとなったが、蒲生選手は5位にポジションアップ。再び黒澤選手バトンを繋いだが、BOP(バランス・オブ・パワー=性能調整)によるMercedes-Benz AMG GT3車両に対する最低重量のアップがボディブローのように効いてくる。加えて初戦の優勝による40㎏のウェイトハンデはタイヤを、そしてマシンをじわりじわりと締めつけてくる。さらに上位を走るのは優位な規定のJAF-GT、スバル「BRZ」やトヨタ「プリウス」、「86MC」といったマシンだ。タイヤの摩耗も、ブレーキの摩耗も上位陣に比較すれば厳しい状況で、終盤12位までポジションを下げてしまった。それでもあきらめずにアクセルを踏み続け、コースから飛び出そうとするマシンをねじ伏せるように格闘を続けて、ラストパートを受け持った蒲生選手は8位にポジションを上げてフィニッシュ。ランキングはひとつ下げたものの、4戦ぶりのポイント獲得は、次戦のタイ戦で上位争いができる感触を掴むものだった。