500㎞レースから300㎞レースへ、初夏の5月から盛夏の8月へと。
富士山の雪もすっかり姿を消し、雄大な黒富士を背にするように走り抜ける約1500mもの長いメインストレートが最大の特徴で、
パワーに勝りトップスピードの伸びるFIA-GT3勢が有利なコースだ。加えて第3戦のオートポリス、前戦のスポーツランドSUGOに比べ、
ウェイトハンデの影響も小さいと言われている。影響が大きいSUGOの決勝。雨がらみの戦いだったとはいえ、
序盤からトップを走行したLEON CVSTOS AMG-GTと黒澤治樹選手、蒲生尚弥選手にとって、今回は自然と気合が入るというもの。
全スタッフが今シーズン初優勝をも視野に富士スピードウェイに乗り込んだ。
練習走行の8位からさらにジャンプアップ。4番手スタートを決める!
予選前に行われた練習走行でLEON CVSTOS AMG-GTは8位のタイムを記録。上位陣はその優位性を証明するかのように6位までずらりとFIA-GT3マシンが並んだ。
第2戦の富士ラウンドはまだウェイトハンデが課せられていないマシンも多く、開幕戦の2位で重いハンデを背負わされたLEON CVSTOS AMG-GT は予選15番手と苦戦を強いられたが、
ラウンドが進み他のマシンもそれぞれ重いハンデを搭載しており第2戦ほどの差はない。予選で少しでもポジションを上げることができれば、決勝レースは表彰台も期待できる状況だ。
まずは蒲生尚弥選手が乗り込んでQ1に出走。「ウェイトハンデの重さはそれほど感じなかった」と語った蒲生選手はマシンのポテンシャルを最大限に引き出し1分38秒340を記録。
全体2番手のタイムで黒澤治樹選手にバトンを渡すことになった。「Q1でマシンセッティングをアジャストしてバランスが良くなった」と、
黒澤選手も負けずにアクセルを踏み込み、蒲生選手を上回る1分38秒203を記録して4番手。トップと2番手にBMW M6がつけており、同じFIA-GT3ながらウェイトハンデの軽い2台がタイムを伸ばしてきた結果だった。
LEON CVSTOS AMG-GTの後方は2台のJAF-GT、SUBARU BRZとTOYOTA PRIUS。そして同じFIA-GT3ながら“直線番長”の異名をとる、とにかくトップスピードの速いポルシェ911。
このラインアップを見れば決勝はそう簡単ではないが「自分たちがしっかりしたレースをすれば勝てる。最低でも表彰台」と黒澤選手は力強く語った。
大きな期待とともにスタートした決勝はまさかの展開に……
予選日は厚い雲に覆われ、この時期とは思えない気温だったが決勝日は一転。朝から青空が広がり気温はぐんぐん上昇したものの、スタート時間は午後3時25分。
チームは路面温度が下がると予想。そして午後から雲が出始め、スタート時の路面温度は36度。予選時の33度とほぼ同じで、チームの読みはずばりと当った。
これを想定して予選のタイヤを選択した。あとは確実に、ミスなく走り切れば結果はついてくる。期待とともにスタートを迎えたが、まさかの展開が待ち受けていた。
LEON CVSTOS AMG-GTは黒澤治樹選手が乗り込んでスタート。だが「タイヤのウォームアップが悪く膨らんでしまった」と黒澤選手。
タイヤが温まりきらないまま飛び込んだスタート直後の第1コーナー。各マシンが横に並んでクリアするような混乱の中で挙動を乱してしまい、
8番手から好スタートを切った3号車GT-Rと接触してしまったのだ。LEON CVSTOS AMG-GTに大きなダメージはなかったものの、GT-Rはコースアウトを喫しリタイアとなってしまった。
黒澤選手は8位に後退したもののペースを取り戻して追い上げ態勢に。しかし、そのスタート時の接触がペナルティの対象となりLEON CVSTOS AMG-GTはドライブスルーペナルティを受ける。
11周を終えて黒澤選手はピットにマシンを向けた。コースに復帰した時には最後尾近い28位まで後退してしまった。それでも黒澤選手は諦めることなく好タイムを刻み続け、
じわりじわりとポジションを上げて35周を終了して蒲生尚弥選手に交替。蒲生選手も快調にラップを重ね、この日の全体のトップタイムも計測。13位まで挽回してフィニッシュとなった。
開幕戦から続いていた連続ポイントゲット(10位まで与えられる)は途切れたが、今季から使用するブリヂストンタイヤのデータ収集はできた。重いハンデを背負いながらもトップ争いができるスピードを確信したレースに。
次はシリーズ中、最も過酷な鈴鹿1000㎞。ここでチーム力を見せつける――! 夕闇迫る富士で、すべてのスタッフがその思いを胸に誓った。
黒澤治樹 「タイヤのウォームアップが悪く3号車と当ってしまった。あれがすべてです。自分でレースを台なしにしてしまいました。その後はいいペースで走れたけど、3号車をリタイアさせてしまい、チームに対しても申し訳ない気持ちでいっぱいです。次はライバルに対してウェイトハンデが軽いので頑張ります」
蒲生尚弥 「スタート時の路面状況は予想したとおりで、問題なくいいペースで走ることができました。タイヤのセットアップも良かったし、今回いいパフォーマンスを見せられたことは次の鈴鹿に繋がると思います」