REPORT

ROUND6

SUZUKA 2017 / 08 / 26 - 27

2017 Super GTシリーズ Round6 鈴鹿サーキット「SUZUKA1000kmTHE FINAL」
65 LEON×CVSTOS AMG-GT 黒澤治樹 蒲生尚弥
8月26日 公式予選   9位 / GT300クラス出走30台
8月27日 決勝レース 優勝 / 158周
シリーズ中、最もアツく最も過酷な鈴鹿1000㎞に挑む!

 Super GTシリーズでは夏の3連戦、7月23日のスポーツランドSUGO、8月6日の富士スピードウェイ、そしてこの鈴鹿サーキットでの戦いがシリーズ、 つまりタイトル争いの行方を決めると言われているが、その中で最も重要なのが今回の鈴鹿1000㎞。

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通常は300㎞のレース距離で争われるのに対し、その3倍以上を走り通さなければならず、加えて夏の残暑が襲いかかる、シリーズ中最も過酷な戦いとなる。 そのためにボーナスポイントが設けられているほどで、優勝すれば通常は20ポイントだが、鈴鹿は25ポイント。2位は通常の15に対し18ポイントが、3位は11に対し13ポイントが与えられる。 LEON CVSTOS AMG-GTと黒澤治樹選手、蒲生尚弥選手にとっては、この鈴鹿で今シーズン初優勝を飾りたいところだ。そしてそれを後押しする要素もある。 鈴鹿は低速から中速、高速コーナーが混在し、長いストレートもあるテクニカルコースだけに、マシンバランスに優れたMercedes AMG GT3にとっては得意コース。 他のコースに比べウェイトハンデの影響も小さくなる。ポイントランキング6位、ウェイトハンデ54kgで臨むLEON CVSTOS AMG-GTにとっては大きなチャンスと言える。 事実、黒澤選手も「鈴鹿はマシンとの相性がいいコースだし可能性はある」と語っており、全スタッフが「今シーズン初優勝」を心に秘めて、過酷なバトルに挑んだ。

「9番手も決勝で追い上げることができる! 」大きな手応えを掴んだ予選

 黒澤治樹選手の言葉どおり、65号車 LEON CVSTOS AMG-GTは予選前に行われた練習走行で見事トップタイムを記録。ハーフウェットからドライへ変わる難しいコンディションでの快走だった。 蒲生選手も黒澤選手同様に「メルセデスはオールマイティなマシン。鈴鹿との相性は悪くない」と語っており、次第に予選、決勝への期待も膨らんでくる。 だが、いざ予選となるとやはりウェイトハンデの軽いクルマ、そしてJAF-GTマシンが牙をむいてきた。蒲生選手がQ1を3番手でクリアし、黒澤選手につないだものの、トップ3は共通のマザーシャーシを使うJAF-GTマシンが占める結果に。 しかもポールは82㎏ものハンデを搭載するMC86の25号車だった。黒澤選手は健闘したものの結果は9番手。だがこれは織り込み済みのことでもあったという。「ウェイトハンデの軽いクルマが上に来ると思っていた。 10番手以内がとりあえずの目標だった」と黒澤選手。マシンバランスがいいということは、タイヤにかかる負担も軽減でき、追い上げも十分可能だ。なにしろ1000㎞もの長丁場。安定した走りを最後まで続けることができれば、おのずと結果はついてくる。 それはドライバーも含めたチームの総合力の高さの証明でもある。ジャンプアップを見据えて決勝に臨むことに。

1周目で黒澤選手が突如、ピットインの理由

 決勝スタート時の使用タイヤは予選Q1かQ2に使用したどちらかが抽選で決められ、鈴鹿ではQ1使用タイヤに決まった。65号車 LEON CVSTOS AMG-GTは蒲生尚弥選手が3番手タイムを記録したソフトコンパウンドタイヤとなる。 ハードコンパウンドに比べてライフが短いがラップタイムが良いため追い上げが可能だ。LEON CVSTOS AMG-GTには黒澤治樹選手が乗り込み9番グリッドからスタート。だが追い上げどころか黒澤選手はわずか1周しただけでピットに飛び込んできたのだ! 誰もがトラブルかと思ったこのピットイン。実はチームが練り上げた、誰もが驚く大胆な作戦だった。上位陣のタイムが拮抗している状況ではいくらソフトコンパウンドでもそう簡単には抜けない。 ならばLEON CVSTOS AMG-GTの速さを最大限に生かせる状況を作り出そうと。タイヤをハードコンパウンドに換え今度は蒲生尚弥選手が乗り込んでコースに復帰。最後尾になったものの視界の中に他のマシンはいない。 ハードコンパウンドでも安定した好タイム出せることはわかっていた。あとはドライバーが確実にそれを実行するだけだ。蒲生選手は2分2秒台のタイムを連発。「尚弥は予想以上に速かった」と黒澤選手が回想するほどの走りでタイムを削り取っていった。 この時のGT300上位陣のタイムは2分3秒から5秒台。
 この作戦が成功した。ピットインのたびにLEON CVSTOS AMG-GTはポジションを上げ、レース折り返し時点で4位に浮上。黒澤選手から蒲生選手に最後のバトンを渡したのは131周目のこと。 この時点でLEON CVSTOS AMG-GTは2位に浮上していたが、トップを走る25号車とは8秒近い差があった。2位を守る走行もチャンピオンシップを考えれば重要なことだが、それは誰もが許さなかった。もちろんステアリングを握る蒲生選手も、だ。 そこから強烈な追い上げが始まった。トップとの差を1周1秒近く削り取って行く蒲生選手。そしてその時は150周目にやってきた。25号車を第1コーナーで鮮やかに抜き去ったのだ。

作戦を遂行し、ついに今シーズン初優勝!
ポイントランキングのトップに浮上

 チームの戦略は成功した。そしてそれをふたりのドライバーが完璧に実行した。レースは2度セーフティカーランが行われたこともあり、距離ではなく時間優先となり午後6時28分で終了。 蒲生選手がトップに立った時はゴールまで残り16分。あとはミスなく走り切ればいい。夕闇迫るなか、ついにチェッカーフラッグが振られ、65号車 LEON CVSTOS AMG-GTが、それを真っ先に受けた。 ピットから身を乗り出して見ていた黒澤選手の目からは大粒の涙が。もちろんチームスタッフ誰もが同じだった。優勝を期待されながらもできなかった。ここまでの苦難が走馬灯のようによみがえってきた。 だがこれからは違う苦難が待っている。そう、チャンピオンへの道だ。LEON CVSTOS AMG-GTに抜かれた25号車がその後コースアウトしてノーポントに終わったため、25ポイントを加算したLEON CVSTOS AMG-GTは一気にランキングトップに浮上。 追う立場から追われる立場になったからだ。

DRIVER COMMENT

黒澤治樹 「SUGOでトップを走りながら勝てなかった。何が悪かったのかチームでミーティングを重ね、今回につながった。尚弥もいい走りをしてくれたし、BSタイヤとのマッチングも良かったし、みんながパーフェクトな仕事をしてくれた結果です。強いチームを作ろうと皆で頑張ってきたのですごくうれしい。すべての人に感謝したいです」

蒲生尚弥 「AMGとBSタイヤのマッチングが良くなって素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれて、気持ち良く走れました。最後は25号車が見えて目標ができたのでさらにいい走りができました。残りは2戦、タイも、もてぎもクルマ的に合っているコース。2勝目も期待できると思うので頑張りたいです」

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